投資の情報は、今ではインターネットでいくらでも手に入ります。海外の株価も、企業の決算も、現地のニュースも、家にいながら知ることができます。
それでも、自分で現地を訪れ、人々の暮らしや経済の変化を見ようとしてきた投資家がいます。ジム・ロジャーズです。
ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンドを設立し、投資家として大きな成功を収めた人物です。彼の名前が知られている理由は、運用成績だけではありません。世界各地を旅しながら、これから成長する国や産業を探してきたことでも知られています。
投資家が世界一周に出た理由
ジム・ロジャーズは1942年、アメリカのアラバマ州に生まれました。大学卒業後に金融業界へ入り、1970年代にはジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立。ファンドの運用で成功を収めた後、比較的若い時期に運用の第一線を退きました。
その後、彼が取り組んだのが世界を巡る旅です。
1990年代にはバイクで世界を一周し、さらに2000年代には自動車で世界各地を巡りました。旅を通じて、各国の経済や人々の暮らしを自分の目で確かめようとしてきたのです。
投資家というと、決算書やチャートを分析する姿を思い浮かべるかもしれません。でも、企業が成長する背景には、その国の人口、教育、産業、政策、そして人々の生活があります。
数字を読むだけでは見えてこないものを、現地で確かめようとした。そこに、彼の投資スタイルの特徴があります。
今、成長している国と、これから成長する国
ロジャーズは長年、新興国や商品市場に注目してきました。
すでに経済が成熟した国だけでなく、これから所得が増え、消費が拡大し、産業が発展していく国にも目を向けてきたのです。
たとえば、ある国で道路や港湾などのインフラが整備されれば、物流が改善し、企業活動が活発になる可能性があります。所得が増えれば、食品や日用品、住宅、自動車などへの需要も変わっていくでしょう。
そう考えると、投資先を探すときには、今の株価や企業業績だけでなく、その企業が置かれている国の変化を見ることにも意味があります。
ただし、ここは注意したいところです。
経済が成長する国の株が、必ず上がるとは限りません。
国全体の経済が成長しても、その恩恵がすべての企業に行き渡るわけではありません。政治や制度の問題、通貨の下落、インフレ、企業統治への不安などが投資成果を左右することもあります。
将来性のある国を見つけることと、そこで利益を上げられる企業を見つけることは、分けて考える必要があります。
自分の目で見るということ
ロジャーズの投資姿勢から、私たちが参考にできることがあります。
それは、誰かの意見をそのまま信じるのではなく、自分なりに確かめることです。
たとえば、ニュースである国の経済成長が話題になっていたとします。
そこで「この国は伸びそうだ」と思うだけで終わらせず、何が成長を支えているのかを考えてみる。人口が増えているのか、消費が拡大しているのか、海外からの投資が増えているのか。それとも、一時的なブームなのか。
日本にいても、調べられることはたくさんあります。企業の決算資料を読む、現地のニュースを確認する、その国で事業を展開する日本企業の動きを見る。そうしたことも、自分なりの調査です。
旅行先で見かけたお店がにぎわっていたからといって、その企業の株が有望だとは限りません。でも、「なぜ、この商品が売れているのだろう」「この地域では、どんなものが求められているのだろう」と考えることは、経済を見る練習になります。
大切なのは、見たものをそのまま投資判断に結びつけることではなく、そこから疑問を持ち、調べることだと思います。
娘たちに伝えたかったこと
ロジャーズは、自分の娘たちの教育についても発信してきました。中国語などの外国語を学ぶことや、世界の歴史や文化を知ることを重視してきた人物です。
世界を知ることは、投資のためだけではありません。自分が当たり前だと思っていることが、別の国では当たり前ではないと気づく。違う価値観に触れることで、物事の見方が変わることもあります。
投資でも、同じことが言えるのではないでしょうか。
日本のニュースだけを見ていると、どうしても日本を中心に世界を考えてしまいます。でも、資源価格が動けば資源国の経済が変わり、海外の金利が変われば世界のお金の流れも変わります。
自分のいる場所から少し視野を広げるだけで、今まで気づかなかったつながりが見えてくることがあります。
ジム・ロジャーズのように世界中を旅することは、誰にでもできるわけではありません。それでも、普段見ていない国のニュースを一つ読んでみる、知らない産業について調べてみる。そんな小さなことから始められます。
投資で大切なのは、情報をたくさん集めることだけではありません。集めた情報をどう考え、自分なりの判断につなげるかです。
みなさんが普段見ているニュースは、日本の中だけに偏っていないでしょうか。
いつもとは違う国、違う産業に目を向けてみる。そこから、今までとは違う投資の見方が生まれるかもしれません。



