キャシー・ウッド|未来を読むことと、未来に賭けること

「まだ評価されていないけれど、これから大きく成長するかもしれない」

そんな企業を見つけて、早い段階から投資する。言葉にすると簡単ですが、実際にやるのはなかなか難しいことです。

周りの人が注目していない企業に投資するには、自分なりの考えが必要ですし、予想どおりに株価が動かなければ、不安にもなります。

そうした投資を世界に知らしめた人物の一人が、キャシー・ウッドです。

彼女は、米国の運用会社ARK Invest(アーク・インベスト)の創業者。電気自動車や人工知能、ゲノム編集など、将来の産業構造を大きく変える可能性のある技術に注目してきました。

従来の投資の考え方にとらわれない

キャシー・ウッドは1955年生まれ。金融業界で経験を積んだ後、2014年にARK Investを設立しました。

ARKが重視しているのは、「破壊的イノベーション」と呼ばれる技術です。

これは、既存の産業やサービスのあり方を大きく変えるような技術のこと。たとえば、電気自動車が普及すれば、自動車メーカーだけでなく、部品やエネルギーに関わる企業にも影響が及びます。AIの進歩も、これまで人が行ってきた仕事や企業の収益構造を変える可能性があります。

キャシー・ウッドは、こうした変化が社会に広がることで、企業の成長も大きく加速すると考えています。

実際、ARKのETFは2020年に大きな上昇を記録し、彼女の投資手法は世界的に注目されました。ただし、その後は株価の下落によって大きな損失を経験した投資家もいます。

未来の成長を早く見つけることと、その投資で利益を得ることは、同じではありません。

未来が明るくても、株価が上がるとは限らない

キャシー・ウッドが注目してきた企業には、テスラなどがあります。ARKは、電気自動車や自動運転、AI、ゲノム編集といった分野に投資してきました。

こうした技術には、今までになかった市場を生み出す可能性があります。

ただ、ここで投資家として考えたいことがあります。

技術が素晴らしいことと、その企業の株を買えば儲かることは別の話です。

たとえば、ある技術が10年後に社会に欠かせないものになるとします。それでも、企業が利益を出せるとは限りません。競争相手が増えるかもしれませんし、開発費がかさむかもしれません。技術が普及するまでに、予想以上の時間がかかることもあります。

さらに、将来の成長がすでに株価に織り込まれていれば、企業が成長していても株価が下がることがあります。

未来を考える投資では、「この技術はすごい」で終わらせず、その成長によって、企業の利益がどこまで増えるのか。そして、今の株価はその期待をどこまで織り込んでいるのか。 そこまで考える必要があります。

大きな可能性には、大きな不確実性もある

2022年以降、金利上昇などを背景に、ARKの主力ETFは大きく下落しました。将来の成長を重視する企業は、現在の利益よりも将来への期待で株価が高く評価されていることがあり、金利が上がる局面では売られやすくなるからです。

これは、キャシー・ウッドの投資を考えるうえで見逃せない点です。

将来性を信じて投資するなら、株価が下がったときにどうするのかも、あらかじめ考えておかなければなりません。

当初の見通しが変わっていないのか。企業の競争力に問題が出てきたのか。それとも、金利や市場全体の変化によって評価が下がっているのか。

同じ下落でも、理由によって判断は変わります。

長期投資だからといって、何があっても持ち続ければいいわけではありません。自分が何に期待して投資したのかを、定期的に確かめることが大切です。

未来を想像する。でも、数字も確認する

身近なところにも、投資のヒントはあります。

普段使っているサービスが急速に広がっている。これまで人が行っていた仕事をAIが担い始めている。新しい技術によって、業界の常識が変わりつつある。

そうした変化に気づくことは、投資先を探すきっかけになります。

ただし、気づいた時点で買えばいいというわけではありません。その企業は本当に成長できるのか。競争相手に勝てるのか。売上や利益は伸びているのか。株価は期待を先取りしすぎていないか。

調べていくと、最初に感じた魅力とは違う一面が見えてくることもあります。

未来を想像する力と、目の前の数字を冷静に見る力。この二つを組み合わせることが、投資では大切なのだと思います。

キャシー・ウッドの投資から学べるのは、単に新しい技術に賭けることではありません。まだ見えていない変化を考え、その可能性を自分なりに検証する姿勢です。

みなさんが最近、「これは世の中を変えるかもしれない」と感じた技術やサービスは何でしょうか。

その変化によって、どんな企業が成長し、どんな企業が影響を受けるのか。そこから考えてみると、いつもとは違った投資のヒントが見つかるかもしれません。