ウィリアム・オニール|良い会社を探すだけでは、株価の上昇に乗れない

業績が良い会社を見つけた。将来性もありそうだ。ところが、株を買ってみると、思ったように上がらない。

反対に、業績がそれほど注目されていなかった会社の株価が、ある日を境に大きく上がり始める。

株式投資をしていると、そんな場面に出合うことがあります。

企業の業績を調べることは大切です。でも、良い会社を見つけることと、その株で利益を上げることは、必ずしも同じではありません。

この違いを考えるうえで参考になるのが、アメリカの投資家、ウィリアム・オニールです。

業績と株価、その両方を見る

ウィリアム・オニールは、投資情報を提供する企業「インベスターズ・ビジネス・デイリー」の創業者であり、成長株投資の手法を広めた人物です。

彼は、株価が大きく上昇した銘柄を研究し、どのような特徴が上昇前に見られたのかを分析しました。

そこで重視したのは、企業の業績だけではありません。

利益の伸び、売上の成長、新しい製品やサービス、株価の動き、出来高、市場全体の方向性など、複数の要素を組み合わせて判断することでした。

オニールの投資手法として知られるのが「CAN SLIM」です。これは、成長株を選ぶ際に注目する条件をまとめた考え方です。

細かな条件を覚えることもできますが、まず押さえておきたいのは、企業の成長性と株式市場での評価を切り離さずに見る、という姿勢です。

業績が良いのに、株価が上がらないのはなぜ?

たとえば、ある会社が好決算を発表したとします。

売上も利益も伸びていて、今後の見通しも悪くない。それなのに、決算発表後に株価が下がってしまいました。

なぜでしょうか。

ひとつ考えられるのは、投資家がもっと良い数字を期待していたということです。

会社の業績が良くても、市場の期待を下回れば、株が売られることがあります。反対に、業績が改善し始めた段階で、投資家が先回りして買い始めることもあります。

つまり、株価は企業の現在の業績だけで決まるわけではありません。投資家が何を期待しているのか、どれだけ買いたい人がいるのか、といった要素も影響します。

ここでチャートを見る意味が出てきます。

決算書などから企業の状態を調べることと、株価や出来高から市場の反応を観察すること。両方を組み合わせることで、企業の成長が株価にどう反映されているのかを考えやすくなります。

株価が上がり始めたら、買えばいいのか

では、株価が上昇し始めた銘柄を見つけたら、買えばよいのでしょうか。

もちろん、そう単純ではありません。

上昇には、業績の改善を背景にしたものもあれば、一時的な材料や投資家の期待が先行したものもあります。出来高を伴って高値を更新していても、その後に下落することはあります。

また、すでに大きく上昇した株を見て、「まだ上がりそうだ」と飛び乗ると、高値づかみになる可能性もあります。

大切なのは、株価が上がっているという事実だけで判断しないことです。

なぜ上がっているのか。業績に変化があるのか。出来高は増えているのか。市場全体は追い風なのか。そして、自分の考えが外れた場合、どこで判断を見直すのか。

買う理由と、買った後の対応をセットで考える必要があります。

「良い株」と「今、買う株」は違う

オニールの考え方から学べるのは、企業を調べることと、売買のタイミングを考えることは、別々の作業だという点です。

将来性のある会社を見つけても、株価がすでに期待を織り込んでいれば、思ったような利益につながらないかもしれません。

反対に、企業の成長が市場に十分評価されていない段階で、業績や株価の変化を捉えられれば、投資判断の選択肢が広がることもあります。

ただし、どんな手法にも失敗はあります。CAN SLIMの条件に合う銘柄を探したからといって、必ず上昇するわけではありません。相場全体が下落しているときには、個別銘柄の条件が良くても株価が崩れることがあります。

だからこそ、銘柄選びだけでなく、相場環境や損失を管理するルールも欠かせません。

株式投資では、「どの会社が良いか」だけでなく、「今、市場はその会社をどう評価しているのか」という視点も必要なのです。

次にチャートを見るとき、少しだけ立ち止まって考えてみてください。

この株は、良い会社だから上がっているのか。それとも、投資家の期待が先行して上がっているのか。

その違いを考えることが、企業分析とチャート分析をつなぐ第一歩になるのではないでしょうか。