株価が下がると、「安くなったから買い時かもしれない」と考えることがあります。
でも、本当にそうでしょうか。
株価が下がった理由は何なのか。企業の価値まで下がっているのか。それとも、市場の見方が一時的に厳しくなっているだけなのか。
同じ株価の下落でも、背景によって判断は変わります。
こうしたときに思い出したいのが、ウォーレン・バフェットの長年のパートナーだったチャールズ・マンガーです。
バフェットの投資を変えた人物
チャールズ・マンガーは1924年、アメリカのネブラスカ州オマハで生まれました。法律を学び、弁護士として働いた後、投資の世界へ進みます。
バフェットとの出会いは、二人の投資スタイルに大きな影響を与えました。
バフェットはもともと、企業の本来の価値よりも大幅に安く買える株を重視していました。これは、ベンジャミン・グレアムから学んだ投資手法です。
一方、マンガーは、単に安い企業を探すのではなく、競争力があり、長く利益を生み出せる優れた企業に目を向けることの重要性を説きました。
もちろん、どんなに優れた企業でも、高すぎる価格で買えば良い投資になるとは限りません。
大切なのは、企業の質と株価の両方を見ることです。
この考え方は、バークシャー・ハサウェイの投資を理解するうえでも重要なポイントです。
ひとつの知識だけでは、世の中を理解できない
マンガーの考え方で興味深いのは、投資の知識だけに頼らなかったことです。
心理学、経済学、歴史、数学、生物学など、さまざまな分野の知識を学び、それらを組み合わせて物事を考えようとしました。
マンガーは、こうした考え方を支える仕組みを「メンタル・モデル」と呼んでいます。
たとえば、ある企業の株価が急上昇しているとします。
業績が伸びているからでしょうか。それとも、将来への期待が先行しているのでしょうか。多くの投資家が買っていることで、さらに株価が上がっているだけかもしれません。
ここで業績だけを見ていると、ほかの要因を見落とす可能性があります。
人間の心理や市場の需給、金利の変化、競合企業の動きなど、別の角度からも考えてみる。
そうすると、最初は見えていなかったものが見えてくることがあります。
知識を増やすこと自体が目的なのではありません。知識を使って、思い込みや見落としに気づけるかどうかが大切なのです。
自分の考えを疑うことも、投資の技術
投資をしていると、自分が買った銘柄に都合の良い情報ばかり集めてしまうことがあります。
業績の良いニュースは熱心に読み、悪いニュースは「一時的なものだろう」と片づけてしまう。株価が下がると、買った理由を守るために、下落を正当化したくなることもあります。
こうした心理は、誰にでも起こり得ます。
だからこそ、自分とは反対の立場から考えてみることが役立ちます。
「この会社を買わないとしたら、どんな理由があるだろう」
「自分の予想が外れるとしたら、何が起きるだろう」
「今、初めてこの銘柄を調べたとしても、同じ判断をするだろうか」
こうした問いを持つだけでも、判断の仕方は変わってきます。
自分の考えに自信を持つことと、自分の考えが間違っている可能性を認めること。この二つは、矛盾しません。
むしろ、長く投資を続けるためには、両方が必要なのだと思います。
答えを覚えるより、問いを持つ
マンガーの考え方から学べるのは、特別な情報を知ることよりも、物事をどう考えるかという姿勢です。
株価が上がったから良い企業とは限りません。株価が下がったから割安とも限りません。知名度が高い企業だから安心、というわけでもありません。
目の前の情報をそのまま受け取るのではなく、別の角度から見てみる。そして、自分の判断を支えている前提が正しいのか、折に触れて確かめる。
投資では、すぐに答えを出すことが必ずしも正解ではありません。分からないことを分からないままにせず、調べ、考え、判断を見直すことも大切です。
「私はなぜ、この株を買おうとしているのか」
この問いに、自分の言葉で答えられるでしょうか。
マンガーの考え方は、銘柄を選ぶときだけでなく、保有を続けるときや、損切りを考えるときにも役立ちます。
知識を増やすこと。そして、その知識を使って、自分の考えを点検すること。
相場に正解を教えてもらうのではなく、自分で考えるための道具を増やしていく。そこに、マンガーから学べる大切なことがあるのではないでしょうか。



