ジョン・テンプルトン|みんなが悲観しているとき、何を見るか

株価が大きく下がると、不安になります。

ニュースでは悪い材料が続き、投資家の間にも悲観的な見方が広がる。持っている株を売ったほうがいいのか、それとも安くなった今こそ買い時なのか。

頭では「安く買って高く売る」と分かっていても、実際に相場が下がっているときに買うのは簡単ではありません。

そんな場面で思い出したい投資家が、ジョン・テンプルトンです。

悲観が広がる市場に、チャンスを探した投資家

ジョン・テンプルトンは、世界各国の企業や市場に目を向けた投資家です。1954年にはテンプルトン・グロース・ファンドを設立し、国際分散投資の先駆者の一人として知られるようになりました。

彼の投資人生を語るうえで、よく取り上げられるのが1939年の投資です。

第二次世界大戦が始まった時期、テンプルトンは1株1ドル以下で取引されていた104社の株を購入しました。その中には、すでに経営破綻していた企業も含まれていました。

結果として、104社のうち価値がなくなったのは4社だったと、ジョン・テンプルトン財団は紹介しています。

もちろん、これは当時の市場環境や本人の分析があってこその結果です。同じことを今の市場でまねすれば成功する、という話ではありません。

注目したいのは、周囲が不安を感じているときに、テンプルトンはその不安だけで判断しなかったことです。

市場が悲観的になっている理由を考えたうえで、株価が企業の価値に比べて安くなっていないかを探したのです。

安くなった株と、買う価値のある株は違う

株価が下がると、以前より安く買える銘柄が増えます。

ただし、ここには注意が必要です。

1000円だった株が500円になれば、価格は半分です。でも、それだけで割安になったとは言い切れません。

業績が悪化し、将来の利益が以前の半分以下になると市場が考えているなら、株価の下落には理由があるかもしれません。

反対に、一時的な悪材料で売られているものの、長期的な収益力が大きく変わっていない企業なら、株価の下落によって投資価値が高まっている可能性があります。

大切なのは、株価がどれだけ下がったかだけではなく、何が理由で下がったのか、そして企業の価値はどれくらい変わったのかを考えることです。

テンプルトンの投資哲学は、単に逆張りをすることではありません。

みんなが売っているから買うのではなく、みんなが売っている状況の中に、価格と価値のズレが生まれていないかを探すことです。

悲観が強いほど、慎重に調べる

では、相場が急落したとき、何を確認すればよいのでしょうか。

まず考えたいのは、下落の原因です。

市場全体が売られているのか。それとも、その企業に固有の問題があるのか。

次に、業績や財務への影響です。売上や利益が一時的に落ちているだけなのか、事業の競争力そのものが弱くなっているのか。借入金や資金繰りに問題はないのか。

そして、今の株価は、どこまで悪い状況を織り込んでいるのか。

こうした点を調べて初めて、下落した株に投資する意味があるのかを考えられます。

ただし、どれだけ調べても、底値を正確に当てることはできません。割安だと思って買った後、さらに株価が下がることもあります。

そのため、買うかどうかの判断だけでなく、投資する金額や、想定が外れたときの対応も考えておく必要があります。

「安くなったから買う」ではなく、「この価格なら、どの程度のリスクを取る価値があるのか」と考えることが大切です。

みんなと違うことより、自分で確かめること

投資の世界では、周囲と違う行動を取ることが注目されがちです。

みんなが売っているときに買う。みんなが強気のときに慎重になる。

でも、周囲と反対のことをすれば、それだけで利益が出るわけではありません。

市場参加者の多くが悲観的なのには、それなりの理由があるかもしれません。自分だけが見落としている問題がある可能性もあります。

だからこそ、必要なのは、周囲と違う意見を持つことではなく、周囲の意見をそのまま受け入れず、自分で確かめることです。

相場が強いときには、上昇がいつまでも続くように感じます。反対に、相場が弱いときには、下落がいつまでも続くように感じることがあります。

どちらも、そのときの市場心理に影響されているのかもしれません。

ジョン・テンプルトンの投資から学べるのは、悲観的な相場を無条件にチャンスと考えることではありません。

悲観が広がっているときほど、価格と企業の価値を分けて考え、冷静に判断することです。

今の株価は、本当に企業の将来を反映しているのだろうか。それとも、市場の不安が価格を押し下げているのだろうか。

この問いを持てるかどうかが、相場に振り回されないための第一歩になるのではないでしょうか。